Louis's Corpus

漫画「Final Phase」の登場人物『羽貫琉伊』の公式ブログです。 「Final Phase」はフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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「伝奇集」J・L・ボルヘス

こんばんは。羽貫です。帰国しました。
この前の写真、どこだかおわかりいただけましたか?あれは、遠く地球の裏側、アルゼンチンはブエノスアイレスの写真だったんですよ。ブエノスアイレスには、ブエノっ子が世界一広いと自慢する「7月9日大通り」という通りがあってなんと16車線もあるんです!一回の青信号では渡りきれません。
アルゼンチンには、仕事の関係で行きました。以前書いた通りアルゼンチンでは1996年にハンタウイルスによるヒト-ヒト感染が疑われるアウトブレイクが起こっており、このアウトブレイク後もなんどか疑わしい事例が発生しているので、フィールドワークと現地の研究者の方との交流をしてきました。
日本から遠いだけあって(飛行機を乗り継いでたどり着くまで2日ほどかかりました)我々にはあまりなじみがないこの国。アルゼンチンタンゴとマラドーナくらいしかイメージわかないかもしれません。そこそこ経済に明るい方には2001年におこしたデフォルトが記憶に新しいでしょう。アルゼンチンの経済状況は依然きびしいものですが、経済は少しづつ立ち直って来ていると言えるようです。
というわけでせっかく行って来たのでアルゼンチンの作家の本を紹介しましょう。日本でアルゼンチンの作家と言えばこの人しか知られていないんじゃないかな?「伝奇集 (岩波文庫)」J・L・ボルヘス



ボルヘスはいわゆる1960年代のラテンアメリカ文学ブームによって世界的に有名になったアルゼンチンの作家で、幻想的な短編を書いた小説家です。というか短編しか書かなかったひとです。
ともかく幻想的な小説です。モチーフも図書館や秘密結社や夢や架空の小説や…ともかく幻想的。きっと世の中には彼の小説をいろいろ分析してる人々がいると思うんだけど、読む前に分析されちゃうと興ざめだと思うので、スケールの小さい現実から逃避して宇宙とかを感じたい夜中なんか手に取ってみることをお勧めします。17編も短編がはいっているので少しづつ読めばいいですよ、と言いたいとろこですが、彼のあまりにも不思議な世界にどんどん引きずり混まれて、現実にもどれなくなっちゃうのを楽しむのがいいですよ。どの短編もその短編を成立させるための世界観からきっちり作り込んであってひねりきいていて、重量感がハンパないです。迷宮が深すぎて何度読んでも楽しめる、すご過ぎる本です。読み終わって現実に帰って来て自分の部屋にあるリアルな存在(電子レンジとかコンビニの袋とかね!)を見たときの変な気分が僕は好きです。
なんだかあんまりたいした紹介もできないな。でもしょうがない。そういう本なんだから。まあ読んでみてください。



伝奇集 (岩波文庫)

ぜひ。



アルゼンチンを知るための54章 エリア・スタディーズ

幻想的でないアルゼンチンについて知りたい方はこちら。アルゼンチンの地理、文化、国が抱える問題についてまで丁寧に紹介されています。


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  1. 2012/03/15(木) 23:14:05|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介
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「ペスト」ダニエル・デフォー/アルベール・カミュ

こんにちは。羽貫です。
本格的にインフルエンザが流行っていますね。国立感染症研究所のインフルエンザ速報によると今年度はA(H3)亜型が優位とのこと。一番簡単な予防方法は部屋をあったかくして、よく湿気させ、一切外出せずにひきこもることです…無理か。
ところで数年前の新型インフルエンザ騒動のようなことはおきていませんが、中国では去年の暮れに毒性の強いH5N1型鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出ていた39歳の男性患者が死亡したという報道がありました。次にパンデミックを起こすのはこれなんじゃないかと言われているウイルスなので、今後の推移が気になります。

さてさて、本棚紹介だった。
今回は二人の偉大な作家の同じタイトルの本を取り上げたいと思います。ダニエル・デフォー著の「ペスト(疫病の年)」とアルベール・カミュ著の「ペスト」 です。



ペストはもともとげっ歯類(ここを読んでいる方にはおなじみの言葉。つまりネズミですな!)を宿主とします。自然界でペスト菌はげっ歯類→ノミ→げっ歯類というふうに感染が循環していますが(これを感染環と呼びます。)このノミが人を噛むと、人に重大な症状を引き起こします。いわゆる人獣共通感染症です。以前も書いた通り、本来の宿主とは違う生物に感染した病原体は死亡率が高く、ペストも抗生物質が発明されるまでは不治の病、「黒死病」として恐れられました。
今回取り上げた二冊の「ペスト」は二冊とも、ペストに襲われた都市にはどのような事が起こるか、を書いていますが、この2冊はかなり毛色が異なります。
ダニエル・デフォーの「ペスト」は彼自身が体験した1665年のロンドンにおけるペストの大流行にもとづいて書かれているノンフィクションに近い作品です。デフォーは言わずと知れた「ロビンソンクルーソー」の作者ですが、ジャーナリストでもあったのでその描写はリアルです。
一方アルベール・カミュの「ペスト」は、アルジェリアのオラン市がペストに襲われ封鎖される、という設定のもとかかれたフィクションです。カミュも言わずと知れた「異邦人」の作者で、フランスの小説家、劇作家です。彼は戦後で最も若く(史上2番目の若さ)でノーベル文学賞を受賞しています。ちなみにタレントのセイン・カミュの大叔父でもあるのですが、そういう風に紹介するのってどうなんだろ…。
というわけで雰囲気がだいぶ違いそうなこの二冊、しかし共通点はあります。それは、疫病にかかって人がばたばた死んでいくという事によって信仰や信念が試される人々が出てくる、ということです。

19世紀までヨーロッパは何度もペストに襲われました。いままで善良に生きて来た人間が、(善悪の観点から見ると)何の理由もなく不治の病にふと感染し、死んでゆく。このような自体にさらされた人間は今まで信じていた倫理観や信仰を試されます。
中世ヨーロッパには「死の舞踏」や「死の勝利」といったジャンルの美術があります。これらの絵画は骸骨の姿をした「死」が王様から貴族、僧侶、商人、農民にいたるまで貴賤、貧富の分け隔てなく踊りながら死に連れ去る描写がされたり、死体の上で死神が誇らしげに鎌をかかげていたりします。また、同じ頃には「メメントモリ(Memento mori)」、つまり「死を想え」という言葉が聖職者から聞かれたりしました。これらはみな当時大流行したペストによって人々の信仰が試された結果起こった現象なのです。

人間は自分の世界を理解し、説明付けをしてある種の秩序をそこに当てはめようとします。季節を知り、社会を構築し、循環する生活を営む。冬の後には春が来て、悪い人間は善い人間に罰せられます。しかし自然災害や疫病はその秩序にはあてはまりません。盲目的に信じていたルールが突如破られ、人々は巨大な不条理の中にほうりだされます。
デフォーの「ペスト」はそれでも神を信じようとします。「もう神なんていないんだ。」と酒場で悪態をつく連中に主人公は説教をします。一方カミュの「ペスト」では「このペストは神の裁きだ」と説いた神父がペストで死亡します。医師のベルナールはペストとの戦いは「際限なく続く敗北だ」とつぶやきます。
感染症の研究に関わっていると、とてもつらい悲劇的な場面によく遭遇します。子供を産んだばかりの母親が、結婚したばかりの若者が、皆にしたわれた父親が、たまたま感染者と接触したせいで、少し免疫力が足りないせいで、ポロっと死んでしまったりします。そのような目にあったときに、我々はどう考えるべきなのか。
疫病にかぎらず、巨大な災害にあった今の僕たちが読むときっと何か感じるところがあると思いますよ。

最後にとても有名なカミュの「ペスト」の中の台詞をひとつ。
「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」




「ペスト(疫病の年)」
原題は「疫病の年」の方が近いかな。


「ペスト」
ベルナール先生は僕のあこがれ。


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  1. 2012/02/16(木) 12:38:57|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介

「感染地図―歴史を変えた未知の病原体」スティーヴン・ジョンソン

こんばんわ。羽貫です。
東京はやっぱり暖かいなと思っていたら雪が…。寒い…。

さて、羽貫琉伊の本棚紹介も今回で4回目、というかまだ4回目か。もっと書いていたような気がしてた。
今回ご紹介するのはスティーヴン・ジョンソン著「感染地図―歴史を変えた未知の病原体」です。




僕の専門は疫学(Epidemiology)なんだけど、これはあまり有名ではないよね。易学とまちがえられたりして、それはそれで興味はありますが、なかなか重要性を分かってもらえなかったりします。
じゃ、疫学ってなんなのよ、と聞かれて、「統計学を使って集団を対象とした、疾病の秩序ある研究をするんだよ♡」とかいっても眠気を誘うだけなので、まずはジョン・スノーをご紹介したいと思いこの本をチョイスしました。ジョン・スノーはともかくかっこいいすごい人なので、彼を知ればあなたも自然と疫学のファンになれるはず。

ジョン・スノーは19世紀前半のイギリスの医師です。当時の医学界の人間はだいたいそれなりの家柄の出身者でしたが、彼はヨークシャーの労働者の長男として生まれました。しかし彼はロンドンまで200マイル歩いて上京したのち医学を学び、そのままロンドンで開業します。そしてついにはヴィクトリア女王の出産時に麻酔医として呼ばれるまでに出世します。なぜ彼がそのような大役をおおせつかったのか。それは麻酔法を確立したのが彼だったからです。すごいでしょ!疫学とは関係ないけど。
この本にもある通り当時の医療の水準はとても低く、顕微鏡でやっと見える「虫」が病気を広めているという考えはまだ誰にも信じられておらず、治療はもっぱら「アヘンチンキ」で、少しのアルコールかアヘンを飲まされた後意識のあるまま(しばしば患者は途中で気絶したが)外科手術が行われる、といったありさまでした。
当時エーテルを使った麻酔は発明はされていたものの、まだ確立されておらず、うまく効く患者もいれば、眠りに落ちない患者がいたり、二度と目覚めない患者もいました。(麻酔は今でもとても難しい技術で、手術中は必ず麻酔医さんが患者さんのバイタルを見ながら麻酔の管理をします。)そんな時代に、ジョン・スノーはエーテルの吸入器を作り、エーテルやらクロロホルムを自分で嗅いで正しい分量を計測し麻酔法を確立したのです。

「彼はロウソクの灯りだけをたよりに、ゲコゲコと鳴いて飛び跳ねるカエルたちの中にぽつんと座る。最新式の吸入器をいじって数分後、彼は口金を自分の頭に固定してガスを放つ。数秒で彼の頭は机に突っ伏す。そして数分後、彼は目覚め、時計を見て意識を失っていた時間を計る。彼はペンを取り、そのデータを記録するのだ。」

ほんとジョン・スノーには感謝してもしたりません。麻酔なしの手術なんて!彼は偏見にとらわれない優秀な医者であり、ものすごいパワーをもった研究者だったということがお分かりいただけたでしょうか。しかし彼がこのまま麻酔医として終わったら、彼は麻酔医としてしか名前を残しませんでした。超売れっ子麻酔医だった彼は、しかし別の研究に手を出すのです。きっかけは1848年のロンドンのコレラ災禍です。ついに来ました。疫学のお話タイムです!

当時コレラは病原体も感染経路も不明の疫病でした。それどころか、原因の菌があるか、感染する病気か、と言った事すら分かっていませんでした。当時広く信じられていたのは「瘴気説」というものです。これは「病毒を含んだ悪臭を吸うと病気になる」という考え方です。病気は人から人にうつる「伝染病」ではないと多くの医師が信じていたのです。このような状況でスノーは実地調査と統計調査をもとに「コレラは飲料水を媒介とする伝染病だ。」という結論を出したのです。
疫学の仕事は少し探偵に似ています。原因不明の事件(病気)があり、犯人(病原体、あるいはそれを媒介しているもの)をさがし、逮捕(封じ込める)する。少し想像してみたください。周りで原因不明の病気でばたばた人が死んでいきます。これは空気のせいでしょうか?水のせいでしょうか?感染症なのでしょうか?それとの農薬のせい?あるいは遺伝の問題でしょうか?どうすれば推理の糸口が見つかり、どうすればそれを証明して被害をくいとめられるでしょうか?
コレラの調査にまつわるジョン・スノーの話はまるで推理小説のようです。あまり詳しく内容を書くと犯人をバラしてしまうのと同じなので、まずは読んでみてください。僕はこんなかんじの仕事をしているのです。

現在の疫学はとても発達していて、調査には正しい手順があり、統計方法にはルールがあります。にもかかわらず、病原体を突き止め感染症が広がりを食い止めるのは至難の業です。ジョン・スノーの調査方法は、現在の疫学調査の方法から考えるといくつか間違いもありますが、当時の周囲の状況に流されずに、これだけの調査をし、正しい結論に至ったことは驚異的です。僕も彼のようでありたいと思いながら日々仕事をしているのです。



「感染地図―歴史を変えた未知の病原体」

こんな方向の仕事をしています。

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  1. 2012/01/26(木) 18:13:12|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介

「微生物の狩人」ポール・ド・クライフ

こんばんは。というかもうおはようですかね。ちゅんちゅん。羽貫です。

僕はハンタウイルス相手に日々地味な生活をおくっています。彼らは凶悪な感染症を引き起こしますが、長い事つきあっていると妙な親近感が湧いてくるから不思議です。この病原体に対する怒りと愛情はウイルスにかかわる科学者なら皆が持っているのではないでしょうか?
さて、今回ご紹介するのは、そんなウイルスや菌に生涯をかけた人々の話です。

微生物の狩人」ポール・ド・クライフ



この本はポール・ド・クライフの「Microbe Hunters」の完訳本です。中世、ヨーロッパでは病は瘴気、つまり悪い空気によって引き起こされると考えられていました。病気には原因になるウイルスや菌がいて、ワクチンを打つと予防ができるという現在ではだれもが知っている知識は当時まったくありませんでした。
この本は17世紀にオランダ人のアントニー・レーウェンフックが自作の顕微鏡をのぞいて「雨だれの中にちっぽけな生きものがいるんだ…泳いでるぞ!」と叫んだところから1910年にパウル・エールリヒが「魔法の弾丸」を見つけるまで、微生物を愛し戦った狩人たち13人を力強く書き出しています。パストゥール、コッホなど教科書でみたことがあるような人も出てきますが、教科書の中の偉人とこの本に出てくる彼らは大違い。彼らは全員エネルギッシュだったり細かいところにこだわりすぎたり異常に警戒心が強かったりする変人です。彼らは妻を、娘を、助手を、学会を、ほんとうにさんざんな目にあわせます。でも、だからこそ、彼らは今我々を支えている科学の下地を作る事ができたのです。やっぱり研究者たるものバランスのいい常識人じゃだめですね。才能ってのは日常生活では欠点にしかならない、しかしだからこそ才能は日常をひっくり返せるのです。
この本はすばらしくおかしい偉人たちを楽しめるだけではありません。読み進めていくと感染症についてばっちり勉強できてしまいます。僕がここで駄文で説明するよりずっといいので、そういう事に興味がある方もこれを読んで下さい。一通り読み終わればかなり体系的に感染症について学べると思いますよ。
でも僕にとってこれはお勉強の本ではなく元気のでる本です。どんなに研究に行き詰まっていても、マッドな彼らのパワーをあびていると僕は何だってできるぜ!という気になってくるのです。というわけで今日も徹夜してしまいました。あはは。この現象が起こるのはきっと僕だけではないはずです。





微生物の狩人

名著です!

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  1. 2011/12/15(木) 04:36:07|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介

「迷走する物理学」リー・スモーリン

こんにちは。羽貫です。

最近CERN(欧州原子核研究機構)でニュートリノが光よりも早いという実験結果がでましたね。まだまだ検証が必要ですが、もし本当ならアインシュタインの相対性理論が誕生から100年目にして覆ることになります。CERNは計画が始まった当初から「巨大な科学者のおもちゃだ」なんて言われてたうえに、起動してみたら故障が相次いだりしてなかなか大きな成果を出せなかったのでこれはいいニュースなのではないでしょうか?
今日はこのニュースでふと思い出した本をご紹介したいと思います。それが現役の物理学者リー・スモーリンによる「迷走する物理学」です。
物理の部門は門外漢なんだけどこの本はわかりやすい上に物理学の研究者の内側までわかって面白いですよ。



「ストリング理論(ひも理論)」とは、ものすごくざっくり言うと宇宙、つまりこの世界全体についての法則を「ひも」とびよんびよんとゆれる「ひもの振動」で説明しようとしている理論です。今までの考え方では綺麗に説明できなかった物理の法則も、この世がひもの理論で出来ていると考えれば理解できるんじゃないかと考えられていました。
CERNが計画されていたころ、最も期待されていた実験の一つもこの「ストリング理論(ひも理論)」にかかわるものでした。CERNの大型ハドロン加速器を使えば今まで何一つ予言出来なかったストリング理論が何かを予言できるのではないかと期待されたのです。物理学で予言というとなんだかおかしな感じがしますが、アインシュタインの相対性理論は重力によって光が曲がる事を予言し、1919年の皆既日食によってそれは証明されました。優れた理論は必ず予言をするのです。そして「ストリング理論」もたくさんの予言をしていますが、それはまだ証明されていません。物理学会の超王道である「ストリング理論」がなぜ、なかなか証明されないのでしょうか?
この本はなぜ「ストリング理論」が今のような袋小路にはいってしまったのかについて詳しく説明しています。おかげでこの本のはどの本よりもわかりやすく「ストリング理論」について説明することに成功しています。現在進行中の理論を教科書のようにすべてわかっている事として書くのではなく、そこにどのような破綻があるのかまで突っ込んで書いているからです。「わかっていること」を勉強するのは学校の勉強です。「わからないこと」を「わかっていること」にしようとつとめるのが学問です。そういう意味では、何がわかってなくて問題だと説明するこの本は学校の教科書にはない面白さと明快さがあるのです。
僕はこの本を読んでいて「何かを理解する」というのはどういうことなのだろうかと考えてしまいました。この世界を説明するとき複雑な理論で説明するのははたして理解したと言えるのでしょうか?例えその理論になんの破綻がなかったとしても、この複雑な世界をもうひとつの複雑な理論で説明する事に意味があるのでしょうか?数学や物理を研究している研究者は理論の美しさが大事だとよく口にします。その意味ではまだ「ストリング理論」は美しくなりきれていません。「ストリング理論」が門外漢にわかりにくい理由はこの辺にあるのだと思います。
この本はさらに物理学会全体の問題について言及しています。主流派が大学のポストを独占し、新しいポストを選定するため研究者は食べて行くために主流派の研究をせざるを得なくなる。これは決して物理学だけの問題ではありません。主流派がつねに正しいとは限りません。偉い大学の先生だからといって後世からみて正しいことを発言するとは限らないのです。これは物理の世界だけの問題じゃないよね。この本は学問とは何かまで考えさせてくれる良著です。





迷走する物理学
ひも理論の本に挫折したことがある方もぜひ。




宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す
科学的公正を期すためにレオナルド・サスキンド氏によるこちらの本も紹介しておきましょう。彼も現役の物理学者です。こちらもなかなか刺激的な一冊。リー・スモーリンとレオナルド・サスキンドはお互いの本の中で批判をしあっています。さて宇宙を理解する上でどちらの言い分が正しいのでしょうか?

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  1. 2011/12/06(火) 12:09:10|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介
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プロフィール

Author:羽貫琉伊
漫画「Final Phase」の登場人物。
架空の人間。
ウイルス、感染症、疫学の研究をする日々。
専門はハンタウイルス。

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