Louis's Corpus

漫画「Final Phase」の登場人物『羽貫琉伊』の公式ブログです。 「Final Phase」はフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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ハンタウイルスについて⑤「ハンタウイルスの研究はなぜ進まないのか?」

こんばんは。羽貫です。

ハンタウイルスについてのエントリー第5回目は、今ハンタウイルスについてどのような研究が行われているかについて説明していきたいと思います。

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ハンターンウイルスが分離されて35年、新大陸型ハンタが発見されてからは20年近く経とうとしていますが、ハンタウイルスの研究はなかなか進んでいないのが現状です。これは決して僕たちがさぼっているからではなく、ハンタウイルスの自然宿主がげっ歯類であるということと関係しているのです。なぜそうなると研究が進まないのかという事を理解するには、少し脱線しますが、寄生体と宿主の関係について説明しなければなりません。

一口に寄生といっても、自然界には様々な寄生の形があります。まず思い浮かぶのはいわゆる寄生虫というやつですね。人間に寄生するサナダムシとか、回虫なんかは目に見えて分かりやすい寄生の形と言えます。病気に関わる菌やウイルスもほとんどが寄生体です。彼らは宿主である人間や動物の体内に寄生して養分を横取りします。ウイルスの場合は宿主細胞を乗っとって子孫を作らせたりもします。
私たちの腸内に大量のいわゆる善玉菌がいるように、寄生そのものが必ずしも感染症に結びつくわけではありません。寄生体の基本的な存在目的は増殖です。しかし寄生体が宿主の復元力をこえて増殖すると宿主は病気になります。これは短期的にはいいかもしれませんが、長期的には次の宿主を探すというリスクを伴います。その結果、宿主と適度に安定した関係を結ぶ寄生体が生き残ることになります。寄生蜂など、宿主を最終的に殺してしまうような寄生の形はごく限られた例なのです。
ではなぜ宿主と共存すべき寄生体が病原体になってしまうことがあるのでしょうか?それは寄生体と宿主の安定していた関係が崩れたからです。寄生体は環境が変わるとうまく宿主と共存出来ず病気にしてしまうのです。そこにはいくつかのパターンがあります。
まずは宿主が弱っている場合です。健康な状態の宿主とならうまく共存できる寄生体も、宿主の免疫力の低下によって病原体となってしまうことがあります。医学的には日和見感染ってやつですね。
そしてより深刻なのが、違う種の宿主にうっかり感染してしまった場合です。これが最も重篤な症状を起こします。以前説明した人獣共通感染症(zoonosis)はこれにあたります。
(他にも特定の個人のみに感染をおこす結核やB型肝炎などがありますが、詳しい説明はまたいつかにしましょう。)

ずいぶん脱線しましたがハンタの話にもどります。ハンタウイルスの自然宿主はネズミです。ハンタウイルスは世界中のネズミと共存しているのです。そのためネズミにハンタウイルスを感染させてもなんの症状も起こしません。これを不顕性感染(inapparent infection)といいます。ハンタを感染させたりワクチン接種を接種させたりしてもネズミは元気なままなので、症状に対する免疫防御機能の要素を分離することは困難です。

つまり何が言いたいかというと、マウス(ネズミ)での実験が全く出来ないせいで、ハンタウイルスの研究はなかなか進まないのです。

ハンタウイルスはマウスのみならずほとんどの動物で顕正の症状を引き起こしません。霊長類はPuumala virusに感染すると腎症候性出血熱起こすのですが、霊長類を使った実験には莫大なお金がかかります。これまでのところ、唯一アンデスウイルスでsyrianハムスターがハンタウイルス肺症候群(HPS)に似た症状を起こすというのだけが分かっているので、これが研究者の一縷の望みです。

僕たちがさぼっていない事がわかっていただけたでしょうか?ともかく実験が困難であるという理由でハンタウイルスの研究はなかなか進んでいないのです。しかしネズミのいる所にはハンタがいるので、研究自体は世界中で行われています。ハンタウイルスの研究者の大きな目標は新大陸型でも旧大陸型でも使えるワクチンを開発することです。ロシアや中国では現在このようなのワクチンを研究中です。
一方、少し前の学会で「感染したシカネズミと未感染のシカネズミを同居させても同居感染が起こらなかった。」ということが発表されるなど(つまり自然界のシカネズミ同士でどうやってウイルスが伝播されるのかわからない)ハンタの研究はまだまだ前途多難といえるでしょう。このウイルスのメカニズムが全て解明されるのはまだまだ先のことになりそうです。

テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

  1. 2011/12/01(木) 21:12:59|
  2. ハンタウイルスについて

プロフィール

Author:羽貫琉伊
漫画「Final Phase」の登場人物。
架空の人間。
ウイルス、感染症、疫学の研究をする日々。
専門はハンタウイルス。

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