Louis's Corpus

漫画「Final Phase」の登場人物『羽貫琉伊』の公式ブログです。 「Final Phase」はフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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「ペスト」ダニエル・デフォー/アルベール・カミュ

こんにちは。羽貫です。
本格的にインフルエンザが流行っていますね。国立感染症研究所のインフルエンザ速報によると今年度はA(H3)亜型が優位とのこと。一番簡単な予防方法は部屋をあったかくして、よく湿気させ、一切外出せずにひきこもることです…無理か。
ところで数年前の新型インフルエンザ騒動のようなことはおきていませんが、中国では去年の暮れに毒性の強いH5N1型鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出ていた39歳の男性患者が死亡したという報道がありました。次にパンデミックを起こすのはこれなんじゃないかと言われているウイルスなので、今後の推移が気になります。

さてさて、本棚紹介だった。
今回は二人の偉大な作家の同じタイトルの本を取り上げたいと思います。ダニエル・デフォー著の「ペスト(疫病の年)」とアルベール・カミュ著の「ペスト」 です。



ペストはもともとげっ歯類(ここを読んでいる方にはおなじみの言葉。つまりネズミですな!)を宿主とします。自然界でペスト菌はげっ歯類→ノミ→げっ歯類というふうに感染が循環していますが(これを感染環と呼びます。)このノミが人を噛むと、人に重大な症状を引き起こします。いわゆる人獣共通感染症です。以前も書いた通り、本来の宿主とは違う生物に感染した病原体は死亡率が高く、ペストも抗生物質が発明されるまでは不治の病、「黒死病」として恐れられました。
今回取り上げた二冊の「ペスト」は二冊とも、ペストに襲われた都市にはどのような事が起こるか、を書いていますが、この2冊はかなり毛色が異なります。
ダニエル・デフォーの「ペスト」は彼自身が体験した1665年のロンドンにおけるペストの大流行にもとづいて書かれているノンフィクションに近い作品です。デフォーは言わずと知れた「ロビンソンクルーソー」の作者ですが、ジャーナリストでもあったのでその描写はリアルです。
一方アルベール・カミュの「ペスト」は、アルジェリアのオラン市がペストに襲われ封鎖される、という設定のもとかかれたフィクションです。カミュも言わずと知れた「異邦人」の作者で、フランスの小説家、劇作家です。彼は戦後で最も若く(史上2番目の若さ)でノーベル文学賞を受賞しています。ちなみにタレントのセイン・カミュの大叔父でもあるのですが、そういう風に紹介するのってどうなんだろ…。
というわけで雰囲気がだいぶ違いそうなこの二冊、しかし共通点はあります。それは、疫病にかかって人がばたばた死んでいくという事によって信仰や信念が試される人々が出てくる、ということです。

19世紀までヨーロッパは何度もペストに襲われました。いままで善良に生きて来た人間が、(善悪の観点から見ると)何の理由もなく不治の病にふと感染し、死んでゆく。このような自体にさらされた人間は今まで信じていた倫理観や信仰を試されます。
中世ヨーロッパには「死の舞踏」や「死の勝利」といったジャンルの美術があります。これらの絵画は骸骨の姿をした「死」が王様から貴族、僧侶、商人、農民にいたるまで貴賤、貧富の分け隔てなく踊りながら死に連れ去る描写がされたり、死体の上で死神が誇らしげに鎌をかかげていたりします。また、同じ頃には「メメントモリ(Memento mori)」、つまり「死を想え」という言葉が聖職者から聞かれたりしました。これらはみな当時大流行したペストによって人々の信仰が試された結果起こった現象なのです。

人間は自分の世界を理解し、説明付けをしてある種の秩序をそこに当てはめようとします。季節を知り、社会を構築し、循環する生活を営む。冬の後には春が来て、悪い人間は善い人間に罰せられます。しかし自然災害や疫病はその秩序にはあてはまりません。盲目的に信じていたルールが突如破られ、人々は巨大な不条理の中にほうりだされます。
デフォーの「ペスト」はそれでも神を信じようとします。「もう神なんていないんだ。」と酒場で悪態をつく連中に主人公は説教をします。一方カミュの「ペスト」では「このペストは神の裁きだ」と説いた神父がペストで死亡します。医師のベルナールはペストとの戦いは「際限なく続く敗北だ」とつぶやきます。
感染症の研究に関わっていると、とてもつらい悲劇的な場面によく遭遇します。子供を産んだばかりの母親が、結婚したばかりの若者が、皆にしたわれた父親が、たまたま感染者と接触したせいで、少し免疫力が足りないせいで、ポロっと死んでしまったりします。そのような目にあったときに、我々はどう考えるべきなのか。
疫病にかぎらず、巨大な災害にあった今の僕たちが読むときっと何か感じるところがあると思いますよ。

最後にとても有名なカミュの「ペスト」の中の台詞をひとつ。
「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」




「ペスト(疫病の年)」
原題は「疫病の年」の方が近いかな。


「ペスト」
ベルナール先生は僕のあこがれ。


テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2012/02/16(木) 12:38:57|
  2. 羽貫琉伊の本棚紹介

プロフィール

羽貫琉伊

Author:羽貫琉伊
漫画「Final Phase」の登場人物。
架空の人間。
ウイルス、感染症、疫学の研究をする日々。
専門はハンタウイルス。

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