Louis's Corpus

漫画「Final Phase」の登場人物『羽貫琉伊』の公式ブログです。 「Final Phase」はフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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感染しちゃいました。

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最後のエントリーになるかもしれないと思いながら書いてます。

一昨日夜から発熱し昨日の未明に隔離されました。ただの風邪の可能性もあるわけですが、そんな希望的観測をしたってしかたがない。最悪の事態に備えて昨日は一日中ベットの上で引き継ぎに追われました。
感染の勢いは数日前から衰えてきていて、流行曲線のピークは過ぎたと思われるので、現状のシステムが上手く回ればあと一ヶ月くらいで段階的に封じ込め範囲をせばめていけるのではないかと思います。この隔離に関係している皆さんはもうプロフェッショナルなのでこれからは僕のサポートもそんなにいらないでしょう。ほんの数人ですが回復傾向にある患者さんもいるし、このままウイルスが弱体化していってくれるといいな。以前書いたけれど、ウイルスは流行の後半になると弱体化することがしばしばあり、今回もこれが起こっているのではないかと僕は推察しています。

しかしどこでウイルスもらったのかな。まあ毎日大量の患者と接触してきたのでどこかで僕がミスをしたのでしょう。全く予想外の感染経路の可能性もありますが。一応毎日の行動記録は付けていますが、感染者との接触人数が多いので僕のは検証の際あまり参考にならないかもしれないな。何かの役に立てばいいのだけど。
ちなみにアンデス型に近いと思われる今回のウイルスはアンデス型と同じくまだ感染経路が解明されていません。アンデス型の調査では感染者と濃厚接触していない患者も発生していて、患者からウイルスがエアロゾルとして排出されたのでは、という仮説もあります。すばらしいことにアメリカでは今回のウイルスがすでに分離されたので、RNA分析もふくめてこれからの研究が待たれます。僕が研究したかったけど。まあ駄目だったら仕方ない。

おそらくかなりの確率で僕は死ぬと思うんだけど、気分は割とスッキリしています。(久しぶりにベットの上でよく寝たってのもあるけど。)感染がだんだん広がっていったころの方がビビってたな。

変な言い方かもしれないけどここ数ヶ月はすばらしい日々でした。
僕は長年学問としての医学に疑問を持っていました。医学は究極的には絶対不可能な「不死」を目標としていて、さらにその「死」すらよく定義できておらず、その状態で人間という対象物に介入するという不確実な学問だからです。生物学者はトムソンガゼルがライオンに襲われていても助けません。天文学者は超新星爆発を止めようと努力しません(そもそもできないけど)。それは学者の仕事ではないからです。彼らは対象物に介入せず、ただ観察します。この世の真理を見つけるために。
僕は縁あってこの世界に入りましたが、ずっと医療行為には関わっていませんでした。僕は生物学に近いウイルスの研究や統計学に近い疫学という学問をしてきました。僕は冷静な観察と分析がしたかった。僕は研究が本当に好きでした。

でもここ数ヶ月の出来事は僕の考えを変えました。僕は今では医学は矛盾だらけなせいで面白く素晴らしい学問だと思っています。それは皮肉な事ですが、沢山の人の死を見たからです。

「死なない人間はいない。」というのは今回s地区で知り合ったs医師の口癖です。
医者っていう人たちは、絶対勝てない戦いをずっと続ける人たちです。確かに人は必ず死にます。しかし医学はその人の死を研究し次の患者さんの死を少し回避する方法を探し出します。これからきっと僕は呼吸器や透析機につながれるわけだけれど、それは過去の患者さんの死があってそれを研究したからこそ確率された治療法なワケです。同じように僕の病も僕の死もこれからの治療の支えとなるのです。

これって面白いと思いませんか?リアルタイムで目の前の患者さんの命は救えなくても、その死によって次の世代の医療が進化していくのってなんだか進化論みたいですよね。まあ、「個体は死ぬけれども知識というDNAが受け継がれていく」っていうのはどの学問でもそうなんですけど。でも医学は、その動機や目的が人の死に関係しているせいで常にタイムラグがあり、世代を超えないと進化できないっていう意味でより進化論っぽくないですか?しかもその進化の方向が本当に正しいか分からず(不死を目指していいのか?とかね)進化しているってのも進化論と合致してるし。
僕はグダグダ回り道をしてやっと、不死という不可能なことを目標にしている医学という学問の矛盾が、矛盾などではなく種の進化の欲望そのものだと気づいたのです。

ま、ちょっと思いついた事を羅列しているだけだし、関連する論文も読んでないので、突っ込みどころ満載なのはゆるしてください。
なにはともあれ、僕はこの数週間「自分が研究している」のではなく「自分が研究の流れの結節点にいる」という事を実感しています。研究者としても僕も、患者としての僕も鎖の一部です。それがわかったら今はスッキリした気分。数週間以内に死ぬ確率がかなり高いのですが不思議なくらい落ち込んでいません。
僕の研究してきた内容はs医師に残しました。ちゃんとまとまってないけど彼女ならきちんと使ってくれるでしょう。もちろん生還する可能性もゼロじゃないし、出来れば自分で研究したいけどね。

と、いうわけで、
僕はこれからの戦いに備えてぐっすり寝るべく落ちます。
がんばれ僕のからだ。
暇なら祈って下さい。

生還できるといいですが、駄目だった場合に備えて…

これまでお世話になった方々、迷惑をかけた方々にお礼を。返してない物がある人、ごめんなさい。
s医師、t助手、君たちのおかげでここまでこれました。本当にありがとう。君たちが感染していない事を祈ります。
あと…なんだろうな?何か言い忘れてる事がありそうだけど突然だったし許してください。

それではみなさん名残惜しいですが、

さようなら。





テーマ:絵・イラスト - ジャンル:日記

  1. 2012/06/28(木) 23:58:00|
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羽貫琉伊

Author:羽貫琉伊
漫画「Final Phase」の登場人物。
架空の人間。
ウイルス、感染症、疫学の研究をする日々。
専門はハンタウイルス。

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